ひっくりかえったおもちゃ箱

 山本鈴美香傑作集 1 ひっくりかえったおもちゃ箱 (ホーム社漫画文庫)

作品名

ひっくりかえったおもちゃ箱


著者

山本鈴美香

巻数

1巻

出版社

集英社

出版年

1978年

おすすめ度

★★★★☆

これから読まれる方へ

なるべくネタバレのないあらすじ

ヒロイン、美鈴ちゃんは14歳の中学生。長い間学校の寄宿舎住まいでしたが、お父さんと一緒に暮らせることになりました、というところから、漫画は始まります。 お父さんは27歳の大人気トップモデリスト、剛さん。周囲は綺麗なモデルさんばかりで、お父さんが大好きな美鈴は気が気ではありません。そんな美鈴に、化粧品のCMモデルとしての出演のチャンスがきました。背も低くスタイルもよくない自分が……と悩む美鈴ですが、かっこいいお父さんに見合う女性になりたいと思う気持ちもあります。   一方、父娘の歳が近すぎることから、周囲は二人が本当の親子ではないのではないかと疑いはじめ……   自分に自身がもてない美鈴が、努力を重ねて魅力的な女性になっていく成長物語。また並行して、美鈴と剛さんの関係は物語を通して解き明かされていきます。剛さんの親友や後輩も微笑ましく、読んだ後心が温かくなります。

 

メモ1

この作品のタイトル「ひっくりかえったおもちゃ箱」は、作品中ある人が美鈴にいう言葉に由来しています。   生きていくことは、おもちゃ箱をひっくりかえしていくようなものだ。時には、少しさみしい色のおもちゃがでてくることもある。でも、ひっくり返すのはおもちゃ箱なのだから、箱の中からは楽しいものしかでてこない。生きるってことは、幸せなことなのだから。   思い出しながら書いているのでかなり不正確ですが、こんな感じの言葉です。印象的ですよね。私は、人生でつらい局面にはこの言葉を思い出してしまいます。

 

メモ2

この作品には続編、「H2O! 前代未聞!!」があります。

 

 

 

  以下ネタバレあり!

 


また読みたくなった方用

剛さんの親友である純さんと、母であるママさんもこの物語の重要な登場人物ですね。純さんは結局最後は失恋してしまうのですが、なにもかもハッピーエンドにはいかないけれど前向きに生きていこう、という作者の人生観がこめられているようです。   美鈴ちゃんがバレエ研究所に通うシーンがありますが、研究所には山本鈴美香自身が出てきて美容体操を教えてくれます。試してみた方も多いのでは?   剛さんが美鈴ちゃんに与えるアドバイスの中に、オードリー・ヘップバーンは自分が醜い少女だと思っていた。だからこそ、綺麗に見える姿勢や所作を研究し、努力してあのような美しい女優になったのだ、というものがあります。当時同じように自分に自信がなかった少女たちには、励みになる言葉だったのではないでしょうか。もっとも、努力をしなければそうなれないという点では、厳しいアドバイスといえるのかもしれません。

 

 


個人的な感想

剛さんと美鈴の関係は恋愛要素はそれほど多くなく、物語を通して剛さんが美鈴の成長を助け見守る、というスタンスです。この辺りは、著者山本鈴美香の代表作「エースをねらえ!」に非常によく似ています。恋愛にうつつを抜かすよりは人間的な成長を重視しようという雰囲気です。   初めてこの本を読んだ時はまだ幼かったので、養子縁組や後見人という立場によって公的に結婚できたりできなかったりするということがよくわかっていませんでした。剛さんと美鈴ちゃんが実際はどういう関係なのかについては、終盤までハラハラさせられます。   ところで、遠野一実さんという漫画家の作品で、この漫画の終盤とそっくりなエピソードをみました。体調不良か寝ているかで、身近な親戚だと思っていた男性にベッドの上に運ばれた時、その人を男性として意識している自分に気づきショックで泣きだしてしまう……というような。今てもとにその本がないのですが、「香る水」というタイトルの漫画ではなかったかと思います。あれは、遠野さんなりのこの作品へのオマージュだったのでしょうか。偶然で片付けられないほどよく似ていたと思うのです。

 


ひっくりかえったおもちゃ箱” への1件のコメント

  1. ピンバック: what cradled me | H2O!前代未聞!!

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