和田君とゆきこのシリーズ(星のハーモニー~わたしの銀河鉄道)

星のハーモニー―ひかわきょうこ傑作集 (花とゆめCOMICS)

データ

作品名

和田君とゆきこのシリーズ(星のハーモニー・冬の空と雪の白・わたしの銀河鉄道)

 

著者

ひかわ きょうこ

 

巻数

1巻+短編(掲載本については下に詳しく書きます)

 

出版社

白泉社

 

掲載誌

LaLa

 

出版年

1980年

 

おすすめ度

★★★★★


読んだことがない方への紹介

ひかわきょうこ最初期のシリーズである「和田君とゆきこのシリーズ」です。

 

高校2年生のゆきこは、自分が損をしても相手を助けてしまうというお人好しでのんびり屋。彼女には和田君という気になる同級生がいました。でも、ゆきこがよかれと思ってすることが和田君のカンに触るようで、いつも怒られてしまいます。少しでも和田君とうまくやっていきたいと思うゆきこですが、空回りするばかりでうまくいかず……。

夏休みが始まる前の終業式の日、また和田君に怒られてしまったゆきこは、とうとう「あなたなんかだいっきらい!」と言ってしまいます。

中学校時代の友達グループで別荘に泊まりに来たものの、和田君のことを思い出しては落ち込んでいるゆきこ。そんなとき散歩中に出くわした女の子は、どうやら和田君と関わりのある人物のようで……。

 

現在は比較的シンプルで見やすい画面構成なひかわきょうこですが、第1話はデビュー当時なせいか凝ったコマ割りやキラキラが多く、昔風の少女漫画っぽい演出もあります。時が進んで、大学生になった2人を描いた「わたしの銀河鉄道」では、かなり現在よりの作風になっています。

 

現在から過去に遡って話が進んでいく凝った構成ですが無理なく読み進められますし、最後数ページできっちりまとめてオチまで決めるストーリー構成の巧みさは「荒野の天使ども」につながるものがあります。また、和田君はひかわきょうこが得意とする「不器用だけど思いやりがある優しい男の子」ですが、藤臣君(「千津美と藤臣君のシリーズ」)やイザーク(「彼方から」)でもおなじみですね。「彼方から」や「お伽もよう綾にしき」からひかわきょうこを知ったという方にも是非読んでいただきたい、心あたたまるシリーズです。

※とは書きましたが、一番心あたたまる最終話「わたしの銀河鉄道」は現在新刊では入手困難です。詳しくは以下の掲載本についてを御覧ください。

 

 

メモ1 作品の時系列

ひかわきょうこ初期の代表作である「千津美と藤臣君のシリーズ」はLaLa増刊号で1979年2月に始まっていますが、この「和田君とゆきこのシリーズ」も同年8月にLaLaに掲載されて始まりました。シリーズは全3話になっています。

 

  • 星のハーモニー(1979年掲載)…和田君とゆきこがつきあいはじめるまで
  • 冬の空と雪の白(1980年掲載)…夏につきあいはじめた2人の、冬になってから
  • 私の銀河鉄道(1984年掲載)…大学進学後の2人

このうち、「星のハーモニー」と「冬の空と雪の白」は表題作にもなっている「星のハーモニー(コミックス・文庫)」に収録されています。最終話の「私の銀河鉄道」のみ、少し時間があいたためか「時間をとめて待っていて(コミックス)」の第2巻に収録されています(同名の文庫本には未収録ですので、お間違えなく)。

 

 

メモ2 掲載本について

上記シリーズ3作を現在入手しようとすると、以下の本を買うのが手っ取り早いと思います。

  • 星のハーモニー・冬の空と雪の白→「星のハーモニー(文庫本)」
  • 私の銀河鉄道→「時間をとめて待っていて(コミックス)」 、もしくは2014年Melody6月号にも付録として掲載されています。コミックス自体が絶版なので、もしかしたら月刊誌ですがMelodyの方が手に入りやすいかもしれません。付録がついているかどうかご確認の上入手されることをおすすめします。

 

 それにしても、コミックスの方は掲載時期のズレのせいで「わたしの銀河鉄道」だけ掲載巻が違うというのは理解できるのですが、なぜ文庫にする際に「和田君とゆきこのシリーズ」としてひとまとめにしてくれなかったんでしょうか。未だに「わたしの銀河鉄道」だけが入手困難状態なのが理解できません。

同作者の「女の子は余裕!」シリーズもコミックス化に間に合わず「彼方から」3巻に収録されてしまった最終話があるのですが、文庫化の際は一緒にしてもらえていました。こっちのシリーズもひとまとめにして欲しかったです。白泉社の方、よろしくお願いします。

 

コミックスが分かれていた「女の子は余裕!」シリーズ3話が文庫でまとまっています。「ちょっとフライデイ」と同時収録です。声つながりでしょうか。

 


感想

hoshino2和田君がゆきこに辛くあたるのは、あまりにもお人好しなせいで損ばかりしているゆきこを見ていられないからなんですよね。口ではゆきこにガミガミ言いながらも、ゆきこに頼み事をしてくる人達を一生懸命追い払っている和田君。いじらしいです。第1話(星のハーモニー)の時点でも、和田君が本当は優しい人であることにゆきこは気づいているのですが、第2話では和田君が本当に心配しているからこそ怒っているのだということがメインテーマとして描かれています。

 

余談ですが、第2話で「こんな狭い道をなんてえスピードで走りやがる」と和田君が車に向かってつぶやくシーンがあり、私は実生活で路地を高速で走り抜ける車に出会うたびにこのセリフを思い出してしまいます。

 

さて第3話。 入手困難状態なんですが、「わたしの銀河鉄道」が一番好きでこのシリーズの中でも出色の出来だと思っています。大学生になったゆきこですが、他人を思いやってしたはずの行動が裏目にでるばかり。自分なりに一生懸命したことが誤解される辛さに思わず涙してしまうのですが、和田君に「あんたはそのままでいい」と言われます。「自信をもちな」「あんたは間違っちゃいない」という言葉が、仕事で疲れ果てた心にしみます……。

自分をひたすらに肯定してくれる男の子というのは少女漫画では鉄板ですが、この場合は主人公が精一杯頑張った上でのセリフなのです。低学年向けの少女漫画にみられる、ドジで失敗ばかりのおマヌケなパープリンなのになぜかハイスペックイケメンに愛されるみたいなミラクル展開ではないのです。他人のために自分をかえりみずに頑張ってしまうゆきこが心配で、つい怒ってばかりになるのだけれど、本当はそれがゆきこのよいところだと和田君は知っているのですね。そのうえで、「そのままでいい」と言ってくれるわけです。ひかわきょうこの漫画すべてに言えると思うのですが、男の子たちは主人公をひたすらに肯定してくれるのですが、それは主人公たちが努力している魅力のある子だからなのです。ただ漫然と生きているだけの女の子には、ひかわ男子は振り向かないのです……このあたりが説教臭くないバランスで盛り込まれているのが、ひかわきょうこの漫画の魅力の1つだと私は思います。

 

なるべく冷静に書こうと努めたのですが、ついつい熱くなってしまいました。藤臣くんのシリーズと比べて和田君のシリーズはあまり知名度がないように思うのですが、優しい気持ちを思い出す作品なので機会があれば多くの方に読んでいただきたいと願っています。

 


参考にしたサイト:前略ひかわきょうこ様  掲載時期や時系列など大変わかりやすくまとまっていました。ありがとうございました。


和田君とゆきこのシリーズ(星のハーモニー~わたしの銀河鉄道)” への3件のコメント

  1. やっぱり私の銀河鉄道、文庫には入ってないんですね(涙)
    ここにたどり着くまでいろいろサーチしたので、助かりました。ありがとうございます。
    銀河鉄道、いい話なのになぁ~。

    • 私も、「私の銀河鉄道」を求めて探したのですが、どうもその話だけ入っていないようです。あれがあってこその和田君とゆきこのシリーズ完結だという気がするので、本当にもったいないと思います。出版は無理でも、せめて電子化してもらえるとうれしいですね。

  2. ピンバック: ひかわきょうこファンなら買っておきたい、メロディ2月号 | what cradled me

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