花伝ツァ(木原敏江傑作選)

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データ

 

作品名

花伝ツァ

著者

木原 敏江

巻数

全1巻(短編)

出版社

白泉社

掲載誌

プチコミック

出版年

1980年

おすすめ度

★★★☆☆    

これから読まれる方へ

 

なるべくネタバレのないあらすじ

雨月物語「菊花の約」(クリックするとwikipediaの該当ページに飛びます)をテーマにした短編です。   戦国時代の話。主人公の一人、赤穴上月(あかなこうづき)は、出雲の赤穴家から近江に遊学中の青年武士です。あるとき、出雲からの急使が来ました。主筋にあたる塩冶掃部介が、尼子経久によって討ち取られたというのです。慌てて出雲に帰る途中、病をえて行き倒れてしまいます。   上月を助けてくれたのは、花車(かしゃ)という若者でした。花車は自分を鬼の一族であるといいますが、上月は半信半疑です。花車は、上月を同族の仲間と誤解し、手厚く介抱します。やがて病が癒えても、上月は無邪気に自分を慕う花車を置いていくことができません。出雲の主家を気遣う気持ちもありながら、花車の家で時が過ぎていきます。   あるとき、花車は鬼の正体を人に見られ、怪我を負って帰ってきます。上月はそこではじめて、花車が本当に鬼であることを知ります。上月の心が離れていくことを覚悟する花車。しかし彼は恐れて逃げるのではなく、花車をかばって介抱するのでした。   時が経ち、上月はとうとう出雲に帰ることを決意します。次の菊の節句までに必ず花車のところに帰ってくると約束して、上月は旅立ちます。故郷に帰った上月は、思わぬ裏切りに遭います。一方、上月が帰るまで人を襲わないと誓いをたてた花車は、生き血が足りないため体力が衰えはじめ……   美しくも哀しい絆の物語です。  

メモ1

この短編が表題作のコミックス「花伝ツァ」は、現在は絶版で古本で購入するしかないようです。「こ♥来(き)♥く…来る!」「あさみどり夏姫」の2編が同時収録されています。  

メモ2

木原敏江は、「菊花の約」そのものも漫画化しています。よほどお気に入りの逸話なのでしょう。以下の「雨月物語」に収録されています。 また、雨月物語の挿絵を描いたものもあります。 以下ネタバレあり!  

また読みたくなった方用

赤穴党にも、許嫁にも裏切られた上月は、監禁されて外出できなくなってしまいます。花車と約束した菊の節句が近づいても事態は変わらず、状況を打開できる見込みがないことに絶望する上月。   やがて菊の節句が近づき、花車は約束通り上月が帰ってくることを信じ、念入りに準備します。当日夜遅く帰ってきた上月でしたが、その顔色は悪く、とても健康な人間には見えませんでした。   最後の力を振り絞って、上月の敵をとって散っていく花車が哀れです。その後、この世のものでなくなった二人が幸せに暮らした様子がほのめかされているのがせめてもの救いです。  

個人的な感想

私は雨月物語の菊花の約より先にこちらの漫画を読みました。絶望の中で花車との約束を信じて覚悟を決める上月も、帰ってくることを信じて待ち続ける花車も、純粋で美しいと思います。忘れられない漫画の一つです。   木原敏江の漫画にありがちな、ぐりぐりおめめの狸顔ヒロインと天真爛漫な相手役という構成ではないのもいいです。花車はピュアですが、鬼である性質から暗い部分も持ち合わせているので。

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