風の谷のナウシカ

ワイド判 風の谷のナウシカ 全7巻函入りセット 「トルメキア戦役バージョン」 (アニメージュ・コミックス・ワイド版)

データ

作品名

風の谷のナウシカ

 

著者

宮崎駿

 

巻数

全7巻

 

出版社

徳間書店

 

掲載誌

アニメージュ

 

出版年

1982年

 

おすすめ度

★★★☆☆


ネタバレなしの紹介

あらすじ

映画が有名なので、紹介する必要はありませんね。

世界を壊滅状態に追い込んだ「火の七日間」と呼ばれる大惨事の後、1000年後の物語です。世界は汚染され、腐海と呼ばれる森とそこに住む蟲たちが生まれています。その腐海のほとりの小国「風の谷」の王女ナウシカが主人公です。風の谷では、腐海の瘴気のため人々の体は毒されていき、石化して亡くなっていきます。ナウシカはときおり腐海に降り、そこに住む蟲や菌類を研究しています。

そんなとき、風の谷と同盟を結んでいるペジテの避難民が墜落してしまいます。大国トルメキアの王女クシャナに攻めこまれ、逃げてきたのです。助けに向かったナウシカに、ペジテの王女ラステルは秘石を手渡し、兄に渡してほしいと遺言して亡くなってしまいます。そこに、秘石を求めるクシャナの軍が攻めてきます。やがてナウシカは、トルメキアともう一つの大国土鬼(ドルク)の戦争に巻き込まれていきます。その騒乱の中で、ナウシカは腐海の秘密や、世界を清浄にする術の存在に気づいていきます。

 

紹介

映画として有名なのは、1,2巻の部分です。そのあたりはほんの序章なので、後半世界の秘密が明かされる部分などは漫画を読まないとわからない仕組みになっています。映画として完結するため、同じストーリーでも人物の役割が入れ替わっていたり、端折られている伏線があったりします。そのあたりも、漫画の方が丁寧に描かれています。

 


ネタバレありの感想

    体裁は漫画ですが、どちらかというより絵コンテのようなもののつもりで描かれているのではないかと思いました。私達は漫画というと、登場人物が暗い気持ちのときは背景はベタ塗りになり、楽しい気持ちのときは点描が飛び、見せゴマは時には2ページに渡るほど大きく、間を表現する空きゴマがあったり……という漫画のお作法に則ったものを想像してしまいがちです。でも、風の谷のナウシカにはそういうものはほとんどなく、コマの大きさもほとんど変わりません。感情のタメを表すためのコマもなく、画面が切り替わるのにしたがってコマも変わっていく感じです。たとえて言えばそう、諸星大二郎先生の漫画のような。
  • 結局、瘴気をまき散らすと考えられていた腐海は、少しの瘴気と引き換えに長い時間かけて汚染された大地を浄化するための仕組みでした。それは王蟲などの蟲とともに、「火の七日間」前の旧人類が世界を浄化するためにつくりだした人工の産物だったのです。そして今いきている人類は、汚染された世界でも生きていけるように体を作り替えられてしまっているのでした。瘴気の中でも小さなマスクがあれば平気な代わりに、生きていくために毒が必要であるため、まったく清浄な世界では生きていくことができないのです。従って、腐海によって浄化された後の世界では今生きている人類は一掃され、清浄な世界で生きていける旧人類と同じ仕組みの人間が新たに生まれる計画になっているのです。ナウシカは森の人セルムに支えられ、その旧人類による清浄術を拒否します。汚染された世界で、血を吐きながら希望に向かって生きていく道を選ぶのです。
  • 「王蟲(オーム)の体液と墓のそれとが同じだった……」と最後にナウシカが回想する場面があります。これは、自然だと思い親しみを感じていた王蟲も、墓と同じく旧人類の知恵による人工物だったことを裏付けています。そしてそれに対して、「それはわたしとあなただけの秘密です」と森の人セルムが答えているのは、旧人類の知恵である壁を破壊してしまった(=人類が清浄な大地に戻る道を自ら断った)ことは他の人達には秘密だと伝えているのです。
  • 映画ではナウシカのボーイフレンド的存在のアスベルですが、後半はほとんど姿を見せません。代わりに森の人セルムが、精神的な存在としてではありますが、ナウシカの心の支えになります。また、同じく映画で見せ場の多かったクシャナも後半はそれほど存在感がありません。後半は、ナウシカと巨神兵オーマが旧人類の叡智である巨大な墓を目指す道程が描かれており、トルメキアや風の谷、土鬼などのほとんどの人たちは置いてけぼりです。クロトワは今にも死にそうになりながらしぶとく活躍します。ユパ様は、途中で死んでしまいます。ユパ様のようなベテラン戦士は、主人公に教えるものを教えた後で亡くなってしまうのがセオリーといえばセオリーなのですが、好きなキャラクターだったのでできれば生きていて欲しかったです。
  • 蟲と心をかよわせる不思議なチカラを持つナウシカが、神であるオーマが唯一心を開く存在となり、誰もが恐れる世界の命運を決める……という流れには萎えました。要するに特別な力を持つ綺麗な心の少女が世界の運命を変える闘いなのです。この流れはもう何度も見ました。よくあるのは最後に「世界を救う」という話ですが、ナウシカの場合は世界の運命を2択で選んだわけです。宮﨑駿もそこは気になったのか、話の中でナウシカを敵に「カマトト」と呼ばせるなど、このような典型的なストーリーに対するアンチテーゼを放っています。それでも、やはり根幹がマンネリ化したストーリーであることに変わりはないと思いまいた。
  • ナウシカは現人類を救ったと言えなくもないかもしれませんが、清浄な世界へ戻る計画は絶たれてしまったので救いと言い切るのはおかしいかも。でも、『生きることは変わることだ 王蟲も粘菌も草木も人類も変わっていくだろう 腐海も共に生きるだろう』とナウシカは言っているので、血を吐きながら生きていくうちにすべてが共生して生きていけるようにそれぞれが進化していくことに希望を託しているのですね。
  • 伏線が多く、一読しただけではまだ全て消化できたとはいえない状況です。何度も読んで、やっと話が飲み込めるような作品だと思います。時間をおいて再読したいです。

 



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