聖徳太子

聖徳太子 (1) (中公文庫―コミック版 (Cい1-32))

 

データ

作品名

 聖徳太子

著者

池田理代子

巻数

7巻

出版社

創隆社(中央公論新社からも文庫が出版されていますし、講談社からも出ているようです)

掲載誌

描きおろし

出版年

1992年

おすすめ度

★☆☆☆☆


紹介

ベルサイユのばらで有名な池田理代子による、日本古代の伝説的人物聖徳太子の生涯を描いた作品です。 民を思いやり、慈しみにあふれた聖徳太子の一生が池田理代子らしい華々しいタッチで綴られています。

 

この漫画は、「日出処の天子(山岸凉子)」に対する池田理代子の発言(後述)のためにむしろ有名になってしまいました。私は「日出処の天子」の方に思い入れがあるのですが、まずその問題は置いておいてとりあえず「聖徳太子」を単独で読んだ場合の紹介をします。

 

 

よくも悪くも、池田理代子らしい

というのが、読んだ時の最初の印象です(ただし人物モチーフやエピソードが「日出処の天子」に酷似している点に目をつぶった場合の話です)。

  • 主人公は心が清い人物で、壁にぶちあたりながらも自らのめざす理想に向かって生きていく
  • その姿に共感し、味方する者が集い始める
  • 敵役(ここでは蘇我一族)がものすごく敵っぽい描写
  • 史実をしっかり調べて、ところどころにエピソードを挟んでいる

特に、聖徳太子が民のためになる政治を目指し、そのために仏教が必要だと考えはじめるあたりなどはもうどこかの学習まんがにでも載せておけばいいのではないかと思えるほどの模範的人物っぷりです。ところどころ挟まれるキラキラしたコマさえなければ、本当に学習歴史まんがにできそうな・・・でも創作エピソードも多いので、そのままというわけにもいかないでしょうか。

 

私自身は、人間にはもっと汚い気持ちやドロドロしたものがあるだろう・・・と考えてしまうので、どうもこういうノリにはついていけないのですが、そういう華々しいノリが好きな人は楽しめる漫画なんじゃないかと思います。まあなんというか、漫画単独でみるなら、そんなに悪い作品ではないし飛び抜けて心惹かれるところもない無難な漫画って感じです。

 

 


 

日出処の天子(山岸凉子)との比較

池田理代子の「聖徳太子」を語る上で避けて通れない問題がこれ。

 

まず、日出処の天子とは

もう紹介の必要がないほど有名な作品ですが一応簡単にご紹介すると、山岸凉子によって1980年から描かれた漫画です。まだ少年~若者といえる時代の聖徳太子を主人公とした作品ですが、聖徳太子と蘇我蝦夷(本作では「毛人」表記)の間に同性愛関係があるのが最大の特色と言えます。

 

 

発端

発端は、2007年に朝日新聞紙上で池田理代子がこんな発言をしたことです。

「大阪そだちの池田にとって、聖徳太子は身近すぎて作品の対象にならなかった。
飛鳥は父親の故郷で、子どもの頃から飛鳥に何度も来た。四天王寺、法隆寺など、
太子ゆかりの寺にも親しんだ。

ところが、ある漫画家が、聖徳太子と蘇我毛人との霊的恋愛を描いた。
『違和感をおぼえました』
池田は文献を読み、仏教学者の中村元らに助言を受けた。」

(参考: 朝日新聞における池田理代子氏の発言について

要するに、日出処の天子が気に入らなかったので自分で聖徳太子を主人公にした漫画を描いた、という主旨のことを言ってしまったそうです。

 

この件に関して、これまで山岸凉子側から反応もなければ、池田理代子側から訂正や謝罪などもなされていないようです(池田理代子の公式BBSで説明があったそうですが、後に削除されているようです)。が、山岸凉子ファンや「日出処の天子」ファンの怒りを買ったことは想像に難くありません。

重なるモチーフ

まあ気に入らないなら気に入らないで、自分が気に入るように漫画を描いたというのはそれはそれでアリかもしれません(口に出すのは大人げないですが)。

 

しかしそのわりには、「聖徳太子」と「日出処の天子」には共通するモチーフが多いので問題視されているのです。

史料では下膨れのはずの聖徳太子が美青年に描かれているのみならず、

  • この時代には一般的でなかった花の髪飾りをつけている
  • 超能力をもっている

など。他の人物も、髪型や体型・特徴などが似ていることが多く、エピソードも(史実にないはずの範囲で)似たものがあります。

 

詳しくは専門の検証サイトがあるようですので、そちらをご参照ください。

池田理代子『聖徳太子』盗作検証Wiki

漫画『聖徳太子』(作:池田理代子)盗作疑惑検証サイト

 

 

 結局のところ

  • 「日出処の天子」が描かれたのが1984年
  • 「聖徳太子」が描かれたのが1992年
  • 池田理代子による発言が2007年

なので、この発言さえなければ「池田理代子の漫画、日出処の天子によく似てるな~。影響を受けたんだろうな」と思われるだけですんだのかもしれません。しかし、気に入らないという主旨の発言をしたにも関わらず参考にしたらしい箇所が多数見受けられることで、パクリや盗作という過激な単語とともに炎上に発展してしまったようです。結果、上記のような検証サイトがつくられて議論されることになったのです。

 

どうにも擁護が難しいのですが、せめて「日出処の天子が印象的な作品だったので、リスペクトしました~」くらいのノリでしゃべっておけばまだ見逃されたんじゃないかと思うのです。それはベルばら作家としてのプライドが許さなかったのでしょうか。

 

この事件で一番感心するのは、これだけ盛り上がっておそらく本人のところにも連絡がいっていると思われる山岸凉子が完全に沈黙していることです。勝手な想像ですが、もう過去の作品だし、無用な騒ぎに時間をとられて制作の時間を減らされたくない・・・と思っておられるのでしょうか。ストイックですね。

 


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