さいとうちほの「とりかえ・ばや」

さいとうちほがとりかへばやを漫画化したって!?氷室冴子・山内直実の「ざ・ちぇんじ!」とはどう違うの!?って思ったので、比較した感想を書きました。よろしければこちらから……[とりかえ・ばや]と[ざ・ちぇんじ!]

記事が長くなったので、とりあえず「とりかえ・ばや」のあらすじだけこちらに書いておきます。

とりかえ・ばやのあらすじ

宮中に仕えるまで

今をときめく右大臣に同じ時期に生まれた女の子(沙羅双樹)と男の子(睡蓮)。二人は母親が違うのに、まるで双子のようにそっくりです。成長し、男の子らしい娘と女の子らしい息子になってしまった二人を案じた父親は、二人を鞍馬詣でに行かせます。そこで天狗の仮面を被った賊に襲われ、無事に逃げ出しますが、これ以来二人はたびたび、天狗の影に付きまとわれることに。この「天狗の呪い」は「ざ・ちぇんじ!」にはない脚色ですが、物語全体を通してのテーマとなっています。

沙羅双樹はやがて帝の命で出仕(帝のいる宮中の役所に勤めること)することになり、男性としての経験を重ねていきます。東宮(後の帝)は序盤では目立つことはないのですが、出仕の当初からちらちらと出てきて、後半に向けてしっかり伏線を張っていきます。色好みの石蕗の中将は始めは互いに反発しますが、だんだん友人として仲良くなります。やがて帝は譲位し、東宮は帝に即位、新しい東宮には、前の帝の娘である女東宮がつくことになります。そんな折、沙羅双樹と睡蓮を敵対視する梅坪の女御の策略によって、沙羅双樹は女のみでありながら右大臣の娘(四の姫)と結婚することに。また睡蓮も、女東宮の尚侍として出仕することになります。 石蕗は、男性として働く沙羅双樹に心惹かれますが、あるきっかけでその妻・四の姫に夜這いして妊娠させてしまいます。妻の妊娠に心当たりのない沙羅双樹は、睡蓮と東宮の吉野行に同行し、そこで吉野の宮と呼ばれる僧侶と出会います。二人が互いに性別を入替えて働いていることに気づいた吉野の宮は、困ったことがあれば頼ってくるようにと二人に言い含めます。

四の姫の妊娠から、沙羅双樹の失踪まで

都に帰った沙羅双樹は、四の姫と内通したのが石蕗であることを知りますが、体調を崩した隙を突かれて石蕗と結ばれてしまいます。四の姫が二人目の子供を妊娠するのとほぼ同時に、沙羅双樹は自分も石蕗の子を妊娠してしまったことに気づきます。一時は吉野で身を投げるほど悩んだ沙羅双樹は、子を産むために姿を隠そうとと決心し、宮中の宴で多くの知り合いにそれとなく別れの挨拶を伝えます。ところが、その目論見は石蕗にばれており、沙羅双樹は石蕗に連れられて都から姿を消すことに。右大臣(四の姫の父)は、四の姫と内通したのが石蕗であることに気づき、四の姫を家から追い出します。都にも噂が広まり、人々は沙羅双樹が姿を隠したのは、愛妻の浮気を知ったからだと思うようになります。

沙羅双樹が行方不明になったことで、今度は睡蓮が活躍する場面が増えます。睡蓮は女東宮と過ごすうちに、健気に頑張る東宮に心惹かれるようになっていきます。一方の女東宮も、女性であるはずの睡蓮を意識し始めます。ところが、帝はかわいがっていた沙羅双樹の不在を寂しく思うあまり、姉弟である睡蓮を帝の尚侍とするよう命じます。帝の尚侍は、帝の秘書のような存在ですが、実際は帝の側室となるものも多かったようです。さすがに男性の身で帝の側室となれば、性別を偽って宮中に出仕したことを責められるのは必至です。悩んだ末、睡蓮は女東宮にだけ性別を偽っていたことを打ち明け、長い髪を切って(伏線です)男性に戻り沙羅双樹を探す旅に出ます。

沙羅双樹の失踪、そして入れ替わり

一方の沙羅双樹は、石蕗に連れられて宇治の別荘で女性としての姿を取り戻す生活を送ります。そこに四の姫が家を勘当されたというニュースが入ってきて、石蕗は一時的に都に戻ることに。やりとりのなかで、情が深い石蕗は四の姫と沙羅双樹に同じように優しい言葉をかけ、その気持ちに偽りはないもののの、石蕗に振り回されて四の姫も沙羅双樹も不幸になっていることに気づきます。このあたりの女心の描写は、長く少女漫画界で活躍してきたベテランだけあって圧巻。「あさきゆめみし」で女三宮が現れたときの紫の上の描写を思わせます。平安時代、一夫多妻の制度の中にあって、男性の心変わりに苦しんだ女性は多かったのですね。

沙羅双樹は結局流産してしまうのですが、睡蓮と合流し、再会を喜びます。もう石蕗と一緒にいる理由もなくなったので、二人で吉野の宮のところに赴きます。たまたま宮を訪ねてきた帝との会話で、女東宮へのプレッシャーと帝の心痛を知る二人。結局、性別を取り替えて宮中に戻り、帝と女東宮を助ける決意を固めます。またここで、吉野の宮が遠い昔に帝の位を狙い、前の帝の妃に横恋慕していた過去があることを知ります。そのため、吉野の君が実は、女東宮の父親であった可能性も出てきました。氷室冴子が「ざ・ちぇんじ!」の後に書いた「なんて素敵にジャパネスク」での帥の宮編を思い出した人も少なくなかったのではないでしょうか。吉野の宮の名前も、同じくジャパネスクに出てくる吉野の君を思い出させます。

ざ・ちぇんじ!では、入れ替わって宮中へ戻った二人がそれぞれ帝・女東宮と結ばれてハッピーエンドで終わりますが、「とりかえ・ばや」はここからオリジナル展開に。

再び宮中へ、東宮の位を巡って

沙羅双樹は睡蓮の切った髪をカツラにして髪が伸びたように見せ、睡蓮も男装に着替えて宮中へ戻ります。同じ頃、四の姫も勘当を解かれて父親の家に戻ります。宮中に戻った石蕗は、沙羅双樹への不実に怒った睡蓮に殴られ、しばらく謹慎することに。帝は沙羅双樹を尚侍にと強く望みますが、沙羅双樹は自分が子供の産めない体であると嘘をつきます。男御子のない帝にとって、妻となる女性は子供を産むことを望まれます。帝は沙羅双樹を思いやり、入内の話をなかったことにします。

さて宮中では、尚侍が不在となった隙を狙って女東宮のところに賊が押し入る事件がありました。東宮をよく思わない勢力もあり、女の東宮が災の種という噂が流れます。女東宮のところへ尚侍として戻る沙羅双樹は、新しく女東宮に仕える三の姫と出会います。三の姫は四の姫の姉妹で、帝の妻の座を狙っていますが、闊達な性格で睡蓮と意気投合。女東宮の寝所に押し入った賊を、睡蓮と三の姫が協力して捕まえます。

ところが、女東宮のプレッシャーは消えることなく、心痛から寝込んでしまいます。療養のため、父(前の帝)の屋敷に滞在する女東宮を元気づけようとして、沙羅双樹は睡蓮をこっそり呼び出します。ところが、睡蓮は女東宮のところに忍んできた盗賊と間違えられ、大騒ぎに。責任を取って、沙羅双樹と睡蓮は蟄居(謹慎)することになりました。この事態に怒った四の姫の父は、四の姫と睡蓮を離縁させ、別の男性と結婚させようとします。そこに石蕗が現れ、今後は四の姫と娘達を大事にすると誓うことで、四の姫は再び石蕗と結ばれることになりました。このあたりの四の姫の芯の強さの描写、見事です。四の姫が最終的に石蕗と結ばれるのは、「ざ・ちぇんじ!」と同じですね。さて、女東宮の心痛を考え、帝は新しく男の東宮をたてることを決意します。

東宮位への陰謀、帝の想い

帝を心配する沙羅双樹は、今度は帝の尚侍となって宮中に戻ります。僧侶の銀覚と式部卿の宮は共謀し、次の東宮として弓弦王を推薦します。ところがこの銀覚、遠い昔に吉野宮を陥れた張本人で、あまりいい感じがしません。肝心の弓弦王は、田舎育ちの元気な少年ですが、後ろ盾となる二人が弓弦王を操作して意のままに政治を動かそうと考えているのですから話は別です。もし沙羅双樹に帝の手がつき男東宮を産んでしまったら、当然弓弦王の東宮の芽は消える。沙羅双樹はそれを利用し、妊娠したと噂を流して銀覚を罠にはめることにしますが、やっと手に入れた証拠の品を賊に奪われてしまいます。怪我をした沙羅双樹を帝は心配し、子が産めなくてもよいので妻にしたいという思いを強くするのでした。(以上「とりかえ・ばや」10巻まで)

連載当初からちょこちょこ出て、だんだん出現度が上がっていた帝ですが、ここにきて容赦なくかっこいい描写が多くなり、さいとうちほの本領発揮というところです。すごい。ぜひ読んで下さい。Kindle版もあります


さいとうちほの「とりかえ・ばや」” への1件のコメント

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